採用学[書評]

採用学(新潮選書)

採用学(新潮選書)

 

おすすめしたい人:

「採用を学問として学びたい」という方におすすめです。「学」とある通り、採用活動を学問と位置づけて大学で研究している方が執筆した本となっています。

私は本書を9冊目に読んだのですが、今まで読んできた8冊(全てではないです)と共通する部分が多数ありました。本書の出版年は2016年と9冊の中で1番古いため、他8冊の著者が本書を参考にした可能性が高いです。このことから個人的には「採用本のパイオニア」として本書を認識しています。本書のAmazonレビューが今まで紹介した本の中で最も質が高くレビュー数もトップクラスであり、本書の価値を証明してくれています。

ただ、あくまで分析・考察であり「採用を成功させるためのヒント」は多数示されますが、「こうしたら採用が上手くいく」というような具体的な手法・ノウハウが書いてあるわけではないことに注意が必要です。

 

ピックアップ:

私がおすすめしたい箇所を1つ紹介します。

 

採用基準を設定する際には「何を見るか」ではなく、「何を見ないか」という視点が必要になる、というものです。基準を決める際、必ず持っていて欲しい能力から、一応持っていて欲しい能力まで付け加えていくといつの間にか「滅多にいないようなスーパー人材」がペルソナになってしまいます。そのような人材を限られた資金と時間で採用するのは難しいです。そうならないためにも、事前に「何を見ないか」という視点を持っておくことで重要なポイントのみに集中することができるようになります。

この2つの基準を決める際に参考になるのが「変わる資質」と「変わらない資質」です。採用後に育成できる能力とできない能力とも言い変えられるかもしれません。著者は「変わらない資質」「採用後に育成できない能力」に重点を置いて採用基準を作るべきだと主張しています。

 

概要:

1章:良い採用とは?

2章:日本採用の現状

3章:良い人が集まる会社の特徴

4章:優秀さとは?

5章:採用方法の様々な事例

6章:採用力の分解

*章題ではありません

 

著者:

著者は服部泰宏氏。本書出版時は横浜国立大学准教授、現在は神戸大学准教授。日本企業の組織と個人の関わりあいや、経営学的な知識の普及の研究等に従事。2013年以降は特に「採用学」の確立に向けた研究・活動に力をそそぐ。

www.b.kobe-u.ac.jp

 

感想:

個人的には高評価レビューが多いのに反して、あまり目新しい情報が得られなかったのが残念でした。というのも本書の重要な部分=レビューで多数取り上げられている部分は今まで読んできた8冊の中で既に出てきたものが多かったからです。本書を先に読んでいれば多くの気付きが得られたはずです。

これと同時に今まで8冊読んできたおかげで、このレベルの内容を既に知っている自分になれたことに感動しています(笑)

まだ少し採用本を読み残しているのがあるのですが、ある程度知識をつけられたこのタイミングで次の段階に進もうと思います。次は自治体や大手人材企業が出しているデータを元に日本の中小企業や札幌の企業に絞った採用の現状や課題を調査します。